暗黒女子の感想(ネタバレあり)

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私のお気に入りのイヤミス作品である暗黒女子の感想です。イヤミスの女王である秋吉理香子さんの作品です。

暗黒女子のあらすじ(ネタバレあり)

この作品はある女子校の高等部、そこの文学サークルで行われた闇鍋会を舞台として進みます。全体としては司会の小百合による闇鍋会の説明から始まり、各メンバーたちがあるテーマを元に書きよった自身の小説を朗読し、また最後は小百合の締めの言葉で終わる、というものです。そのテーマが「白石いつみの死について」

名門ミッション系女子高、聖母女子高等学院において、一躍学園のカリスマとして君臨していた白石いつみ。そのいつみが、スズランの花を手に屋上からの飛び降り自殺で命を絶った。それからというもの、学園内では彼女が主宰していたサークルの中に、彼女を殺した犯人が紛れているのではないかという噂が絶えなかった。

そのタイミングで行われる闇鍋朗読会。主催は澄川小百合。いつみの親友であり、文学サークルの会長として彼女の遺志を継ぐこととなった彼女。闇鍋を囲みながら、部員たちが自ら執筆した「白石いつみの死」についての小説を読み上げる。1話進むごとに、少女たちを包み込む不穏な空気がより重く、ドロドロとした何かに変わっていく瞬間がたまらない。

5人の部員たちが朗読を終えたあと、小百合がある文章を読み上げる。それは「白石いつみによるネタばらし」のはずだった。白石いつみ自身がどのような罪を持っており、どんな策略で部員たちを絡め取ったのか。そして部員たちの浅薄な考えなどお見通しだという痛烈なカウンターパンチ。ここまでなら痛烈なミステリーで終わり、のはずだった。

でも実際には、その後さゆりの独白が続く。なおこの作品の面白いところは部員の誰一人として声を発さないこと。喋るのは小百合だけ。もっとも朗読という形で喋ってはいるのだけど、現在時制での描写が行われるのは小百合だけなのだ。それがネットリとした恐怖感をさらに増している。その独白に含まれる小百合の、いつみに対する妄執、狂気といったもの。すでにこの時いつみはいなくなっている。そして闇鍋という小道具を最大に生かす、いつみの処理方法(まあ全量を鍋にはできないからあくまでも罪悪感を増すための小道具)。

気になる点としては、小百合がいつみと同じように部員の反発に遭う、という点だけどこれは大丈夫。なぜなら小百合は実行犯として綿密な計画を立てていたので、部員のこれまでの罪と、新たに加わった罪を、自らに何かがあったなら世の中に向けて発信するなんて簡単だ。そもそも部員たちは人の生き死にに関わるまでやろうとは思ってなかったわけだしね。(結果的に生まれてくるはずだった命が奪われているのだが)

260ページ程度に舞台設定から衝撃のオチまで真実がコロコロと変わっていく違和感や、それぞれが独立した小説となっているのでテンポよく読みやすい章立て(そういえば小説内小説的な朗読文だったり、物語の主人公という表現のループが楽しい作品だ)だったり、イヤミスを読もうと思った時にまず読んでほしい素敵な作品です!